茨木市の水漏れ調査

事実、まわりにたかっていた人々も思わず笑声を立てたほどだったが、この助手ときたらそれどころじゃなく、今までの茨木市の水漏れ調査にさらに油を加えることになってしまった。彼にはなぜかしらその呼びかたが、良風美俗にもとる由々しき冒涜と思われたのである。「ちぇっ、『みーちぇんかてば!』だとよ」と彼は、ご夫人の金切声を憎態に真似ながら、くってかかった、「それも人なかでよ、いけ図々しいったらありゃしねえ!」そうして彼は、その時はもう一番手近かの椅子に崩折れるように身を投げて例の修理工をも我の隣りにやっとかけさせた顧客のほうへ、ふらふらとした足取りで近寄って行くと、蔑の眼差しで二人を見くらべながら、鼻唄でも歌うように声を引伸ばして浴びせかけた。「ええおめえ、とんだお引きずりだなあ、お裾の辺りが泥んこだあね!」顧客はきゃっと叫んで、救いを求めるように悲しげに辺りを見まわした。彼女は恥かしくもあれば怖ろしくもあったのだが、一方青年修理工はというと、一刀両断に結着をつけようとしてやにわに椅子を蹴って立ちあがった。そして何やら喚きながら、助手めがけて突進しようとしたが、急に足を滑らして、どさりとばかりもとの椅子に尻餅をついてしまった。まわりの笑声はますます高まって行ったが、誰一人として加勢しようとする者はなかった。そこへ斉藤が一役を買って出たのである。彼はやにわにむんずと助手の襟首をつかむと、ぐいと引きまわしざま、怯え立った顧客のところから五歩ほどのところへ、つっ放してしまった。それでこの騷も幕になった。