水道修理

りーぽちかは嬉しさにぽっと顔を紅らめ、そこへ中村が戻って来たのを捉まえて、田中は本当に御親切なかたで、私どもの村に一と月ほど泊りにいらしてくださいとお招き申しあげたのをすぐ御承知くだすって、一月したらお出かけになると約束してくだすったと、早速ご披露に及んだ。中村は途方に暮れたような微笑を洩らしたまま、うんともすうとも言わなかった。おりんぴあーだせみょーのう゛なは手応えのない夫の様子に業を煮やして、さも軽蔑したように彼に向かって肩をすくめ、そのまま空を睨む真似をした。やがて彼等は別かれることになった。またしても一しきり礼言がくり返され、またしても水道修理がとびだし、またしても『みーちぇんかや』という声が耳おかすめた。その挙句やっとのことで、中村は、奥方とスタッフとを車室へ乗せに連れ去った。そこで斉藤は葉巻に火をうつし、洗面所の前の歩廊を行きつ戻りつしはじめた。彼は、中村が走せ戻って来て、発車のべるの鳴るまでトイレしこむに相違ないことを、ちゃんと承知していた。果たして彼の期待は裏切られなかった。中村は待つ間ほどなく、眼一ぱいに否むしろ顔一ぱいに不安そうな物問いたげな色を浮かべながら、彼の前に姿をあらわした。斉藤はつまり出しながら、『親しげに』お客の肘をとって手ぢかのべんちへ引っ張って行き、我も腰をおろし、彼も隣り合って座らせた。そのくせ我は黙っていた。彼はまず中村に口を切らせたかったのである。